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科学

惑星科学から地球の成り立ちを学び人間を哲学する

今回は、惑星科学者の方が書かれた本を読んで、地球の成り立ちを学び、人間存在の謎やその本質について考えてみたいと思います。

地球の成り立ち

「地球の成り立ち」や「人類の歩み」に関することは、松井孝典(著)『我関わる、ゆえに我あり ―地球システム論と文明』(集英社, 2012)に分かり易く書かれています。

本記事では、この本を参考にしています。

その本によると、地球は、核となる小天体を中心として、その周りを回る膨大な数の微惑星の衝突合体を通じて生まれたそうです。

そして、その衝突合体の際に、「大気や海の元になる軽い物質」と「地球の固体部分を構成する重い物質」との分離が起こったそうです。

結果として、原始地球は、原始大気に覆(おお)われてしまい、地表で解放される膨大な衝突熱は、地球外に逃げることができず籠(こも)ることになるそうです。

ゆえに、固体部分の地表は融け、地球はマグマの海に覆われたそうです。

これより後は、膨大な時間をかけて、地球は少しずつ冷えて行くことになります(10億年で-100℃程度)。

この初期の高温状態から冷却するというのが、地球の歴史になるそうです。

冷却に伴って、地球は均質な状態(火の玉状態)から異質な層にそれぞれ分かれて行くことになります。

「均質な状態から異質なものがそれぞれに分かれて行くこと」を分化と言うそうです。

冷却によって、マグマの海に、薄皮のような原始地殻が生まれ、その上に降り注いだ大量の雨によってが生まれたそうです。

その後、原始海洋の中の原始地殻における火成活動を通じて大陸が作られ、少しずつその面積を増やして行ったそうです。

地球の成り立ちを簡単にまとめますと、冷却と伴に「火の玉地球」から「海の惑星」へ、次に「大陸の惑星」、そして「生命の惑星」へと進化を遂げたそうです。

なお、冷却による分化が地球の歴史になりますが、全体が一様に冷えるのではなく、冷えることによって、部分毎に温度差が生じるそうです。

そして、その温度差が、地球のコアやマントルを動かし、大気や海を動かし、最終的には地球環境の多様化に繋(つな)がったそうです。

余談:システム誕生の原理

宇宙の始まりであるビックバンにおいても、超高密度で超高温状態から全てが始まりましたが、その後は宇宙自体の膨張を通じて冷えて行きます。

同様に、地球も生まれた時は熱くその後は冷え続けることになります。

そうすると、最初の生命も生まれた時は熱かったのかもしれません。

実際に、最初の生命は、海中のアルカリ熱水噴出孔で誕生したのではないかという説があります。

世界(システム)の始まりというのは、熱く混沌としたものなのかもしれません。そして、その後は徐々に冷えて行くというのが世界(システム)が形成される時の原理(条件?)なのかもしれません。

この原理に従えば、最初の生命は、熱水噴出孔が何らかの理由で活動を停止し、周囲の海水が熱く混沌とした「生命の核」を冷やして行く過程で誕生したことになります。

なお、この原理は、以前の記事でご紹介した「拡散的思考」から「収束的思考」に移行することで良いアイディアが形になることとも関係があるのかもしれません。

地球システム

その本によると、地球の海水の量および大気の量は、地球の内部(マントルやコア)と関係しているそうです。

つまり、地球の表層と内部は、物質やエネルギーの循環を通じて繋がっていて、それらは連動しているとも言えるそうです。

このことから、「地球はシステムであると考えることも可能になるそうです。

その本によると、システムとは、性質の異なる複数の要素から構成されており、その構成要素が結合した全体のことを指すそうです。

少しだけ言い換えると、システムとは、複数の構成要素から成り、それぞれが互いに作用し合っている系(統一体)のことになるそうです。

また、システムの重要な特徴は、構成要素が互いに関係性を持って相互作用を及ぼしている点にあるそうです。

地球における関係性は、「駆動力」つまり太陽などのエネルギーによって、物質やエネルギーが流れることで生まれるそうです。

構成要素

その本によると、地球システムの構成要素は、次の4つになります:

地球システム={大気圏、水圏、地圏、生物圏}。

大気圏とは、大気やプラズマ圏のことです。

水圏とは、海のことです。

地圏とは、地殻(大陸など)、マントル、コアのことです。

大陸地殻の表層を覆うように存在している多くの生物(有機物)も、一つの性質の異なる物質圏を形成していると言えるので、生物圏として分化されるそうです。

地球を構成するこれらの要素間で複雑な相互作用が働き、その相互作用によって地球は動的な平衡状態が保たれているそうです。

これらの構成要素は、どの一つが欠けても存在しえない関係にあり、その観点からすれば、地球は全体として意味を持つ存在であると言えるそうです。

これらの構成要素の間では絶えずエネルギーが運ばれ、それに伴い様々な物質の移動が起きているそうです。

余談

ちなみに、上述の地球システムの4つの構成要素は、陰陽五行説を知っていると、興味深いと思います。

大気圏とは、陰陽五行説では、「火」のことだと思います。

「火」には、上昇や活発、太陽光という意味があります。

水圏とは、陰陽五行説では、「水」のことだと思います。

「水」には、下降(専門化)や冷静という意味があります。

地圏とは、陰陽五行説では、「金」のことだと思います。

「金」には、石や金属という意味があります。

なお、マントルやコアは「火」ではないかとも考えられますが、マントルは固体の岩石から成り、コアは主に鉄とニッケルから成るそうなので「金」で良いと思います。なお、マントルが液体になったものがマグマであるそうです。

生物圏とは、陰陽五行説では、「木」のことだと思います。

「木」は、五要素で唯一、生命である木を意味するので、生物圏に対応すると思います。

地球システムとは、陰陽五行説では、「土」のことだと思います。

「土」には、中央や器という意味があり、他の五要素をその中に集めると言われています。

やはり、陰陽五行説と地球システムには、関係があると思いました。古代中国の人はどのように陰陽五行説を生み出したのでしょうか。日常生活における深い洞察からでしょうか。

なお、陰陽五行説は、人間の生き方や性格にも関わっていると考えられています。

駆動力

その本によると、地球システムの駆動力は、次の2つになります:

  • 外部にある「太陽からの放射エネルギー」
  • 内部にある「熱」(地殻の中にある放射性元素の崩壊による熱)

この2つの駆動力によって、地球の構成要素の間で物質やエネルギーの出入りが起こり、それを通じて、構成要素同士の関係性が生まれるそうです。

生物圏

生物圏の起源につきましては、以前の記事で触れましたので、そちらをご参照頂ければ幸いです。

その本によると、「生命はシステムである」と考えられるそうですが、その生命が誕生する天体もまた、システムであることが必要条件になるそうです。

システムがシステムを生(う)むと言うのが、宇宙の原理ではないかと考えられるようです。

また、その本によると、生物は幾度となく、絶滅を繰り返しているそうです。

原始的な生命が多細胞生物になり、生命がある環境に適応し特殊化して来ると、絶滅を起こすようになるそうです。

環境に適応して、機能や形態が非常に特殊化すると、特殊化し過ぎたためか逆に絶滅が繰り返し起こるそうです。

ただ一方で、まるでリバウンドを起こすかのように、絶滅の後には、新たな種が爆発的に誕生するそうです。

生物の誕生と絶滅、絶滅後のリバウンド、その繰り返しで、生物は現在まで生き延びて来たそうです。

輪廻転生の思想というのは、このような生物の歴史と関係があるのかもしれません。

その本によると、絶滅のきっかけとなるのは、環境の変化であるそうです。

興味深いことに、激しい気候変動の直後に、重要な生物進化が必ずと言って良いほど起きているそうです。

人間の成長もそうなのかもしれません。厳しい試練の後に、重要な人間的成長があるのかもしれません。

また、原核生物や単細胞生物など単純な生物は絶滅しにくく、最古の生物は今でも生き残っているそうです。

単純な生物は体の造りが単純でタフなので、ほぼどんな環境でも生き延びられ、さらに数が多いので生き延びる確率が上がるそうです。

「シンプルなもの」や「根本的なもの」は、厳しい変化に強いのかもしれません。このことは、人間社会にも当てはまる様な気がします。

また、その本によると、生物には、

  • 「絶滅というリスクを抱えながらある特定の環境下で爆発的に増える生物」と
  • 「生き延びるために原始的であり続ける生物」

がいるそうです。

人間社会においても、この2つの分類が可能だと思います。

繰り返しになりますが、生命が様々な種類に分かれ、ある環境に非常によく適応して繁栄するようになると、ほぼ必ず絶滅が起こるそうです。

投資の世界で、分散投資が勧められているのは、このような生物の歴史(生物の環境との戦い)が関係しているのかもしれません。

人間社会も繁栄しているので、気候変動で引き起こされる「何か」(ウィルス?)によって、絶滅が起こるかもしれません。

確かに、厳しい気候変動で、地球全体が凍結状態になれば、自然に人間社会は大幅に縮小することになると思います。

人間圏の成り立ち

その本では、生物圏から分化した(枝分かれした)人間圏なるものを考えます。

(なお、人間圏という用語は、その本独自のものです。一般的な学術用語ではありませんので、ご注意頂ければ幸いです。)

これにより、地球システムは、5つの構成要素から成るものとして論じられます:

地球システム={大気圏、水圏、地圏、生物圏、人間圏}。

人間圏の地球への影響力を考えれは、この判断は妥当だと思います。

農耕牧畜

その本によると、人間圏が生物圏から分化した(独立した)きっかけは、

  • 「おばあさん」の誕生
  • 言語の能力(抽象的な思考力)の獲得

にあるそうです。

「おばあさん」が誕生すると、「おばあさん」が子供の面倒を見たり、若い女性の出産を手助けしたりするので、結果的に人口の増加に繋(つな)がるそうです。

なお、人間(ホモ・サピエンス)以外の生物には、「おばあさん」という役割を果たす存在は存在しないそうです。

さらに、約1万年前から、気候が氷期(寒い時期)から間氷期(暖かい時期)に移り、気候が安定したそうです。

気候が安定化したことで、季節が規則的に巡ることになります。

季節が安定化すれば、それまで採集していた物がある時期に必ず規則的に採れるようになります。

採集していた物を栽培したことがきっかけで、農耕牧畜が始まったと考えられるそうです。

自然(季節)の規則性(法則性)を利用し始めたという点で、農耕牧畜というシステムは確かに転換点(特異点)なのだと思います。

さらに、その本によると、農耕牧畜という集団による長期的な計画行為には、抽象的な思考の共有がないと成立しないそうです。

ホモ・サピエンスは仲間と話すことを通じて、高い思考力を手に入れたのではないかと考えられるそうです。

また、この頃から、共同体内でストーリー(未来、夢、虚構、物語、神話)を共有することが可能になったと考えられるようです。

いわゆる「共通認識」や「共通の世界観」または「共同幻想」を人類は手に入れたことになります。

共同幻想」とは、具体的な物事として現実に存在するものと言うよりも、架空の、理論上の、もしくは、抽象的な存在を共有することだと思います。

そして、共同体を構成する人々の共同幻想が、それぞれの共同体の求心力になるそうです。

その本では、農耕牧畜により、生物圏から人間圏が分化したと考えます。

つまり、狩猟採集という「その場その場での生き方」から農耕牧畜という「季節の巡り・循環に則った生き方」へ切り替わったことが、システム(生物圏)からシステム(人間圏)を生む転機になったようです。

ただ、アリの中には、巣の中で農耕牧畜のようなシステムを構築している種もいるようです。アリはどのような言語能力や思考力を持つのでしょうか。

農耕牧畜の段階では、まだ人類はアリと同じようなシステムをもつ生物に過ぎないのかもしれません。

産業革命以降

人間圏を生物圏から完全に切り離したのは、産業革命であるそうです。

産業革命では、地球が蓄積して来たエネルギーである化石燃料(石炭)を掘り起こし、蒸気機関と組み合わせ、自分達の駆動力とします。

駆動力を手にしたことにより、人間圏における物質・エネルギーの循環は急速に早まり、人間圏は急拡大することになります。

さらに、人間圏は、駆動力として化石燃料でけではなく原子力も利用し始めます。

原子力とは、原子核が分裂する際に出すエネルギーを利用することです。

原子力発電では、濃縮したウラン235という元素に中性子を当てて核分裂を引き起こし、その際に生じる熱エネルギーを取り出し、発電に利用しているそうです。

人間圏のシステム

その本によると、人間圏というシステムは、

  • 構成要素
  • 構成要素間の関係性
  • 駆動力

の3つに分解できるそうです。

構成要素は、国家、企業、地域、都市、民族、家族、宗教などになるそうです。

要素間の関係性は、

  • 貿易などの物の流れ
  • 為替などの通貨の流れ
  • 人の往来や文化交流
  • インターネットを通した情報の流れ
  • 国家間の安全保障条約

などになるそうです。

駆動力は、化石燃料や原子力、さらには太陽光、風力、水力、火力などになるそうです。

科学の視点から人間を哲学したいが

その本の主題は、惑星科学の視点(文脈)から人間や人間の課題を論じることです。

科学は、外界を客観的に説明することを要(かなめ)として来た学問です。

一方で、哲学は、自己の中の(主観的な)確信こそが、どれだけ疑っても疑えないものであるとして、その確信を思考の基礎にします。

つまり、科学と哲学では、視点が逆です。科学は外側から、哲学は内側から世界を捉(とら)えようとします。

その本では、「自分たちが生きる世界のことを語ることができなければ、自分自身のことも語れるはずがない」という視点に立ちます。意味というのは文脈の中で決まるからです。

言い換えると、「世界とは何か」を論じずに「世界を問う人間とは何か」を論じることはできないと言うことになるそうです。

それゆえに、現代科学の知識(宇宙観)をもって、外界から内界を論じることを試みます。

その本によると、我々の宇宙観、あるいは宇宙理論の発展は、観測技術の発展と密接に関わっているそうです。

優れた理論は、多くの場合、優れた観測によってもたらされて来たそうです。

ゆえに、望遠鏡や顕微鏡のような観測・測定機器の発達は、科学の発達、つまりは人類の科学的な世界観の構築には不可欠なものであるそうです。

また、放射性元素が見つかり、放射性元素の崩壊は時間的に一定の割合で起こることが分かったそうです。

この崩壊を利用することで、地球や岩石などの年齢を正確に推定することが可能になったそうです。

年齢の推定を正確に行えるようになったことで、歴史を科学的に考えることが可能になったそうです。

また、その本によると、科学の大前提もしくは基礎となる考え方が、二元論要素還元主義であるそうです。

二元論とは、「考えようとする自分」と「考える対象」とをはっきり分けて考えることであるそうです。

要素還元主義とは、何かを考える時に、その対象をより細かく分けて領域を狭めて考えることであるそうです。

ところが、この2つの科学の大前提は、現在、揺(ゆ)らいでいるそうです。

実際に、量子力学の世界(ミクロな世界)では、「観測者」と「観測対象」をはっきり分けて考えることができなくなります。

つまり、観測者が「観測対象の状態」に影響を与えてしまうのです。

また、脳の研究では、要素還元主義が使えません。

つまり、脳の構成要素であるニューロン(神経細胞)やシナプス(接合部)の性質を調べても、それらの全体である意識がいかにして生まれるのかが解明できないのです。

これは、大気圏や水圏などの性質をいくら調べても、それらの全体である地球システムがなぜ誕生したのかが分からないとの同じことだと思います。

現在のところ、人類は科学の基礎を揺るがすこれらの事態に遭遇していますが、その本では、哲学の考え方(ウィトゲンシュタインなど)も考慮して、最終的には次のような結論に落ち着いています。

  • 生きることの意味は、世界を私が認識することにある.
  • 我なくして、思考あるいは認識することはできないが、その我は外界と関わることで作られる.
  • 関わりによって形作られるもの、それが我という存在である.

そして、その本では、我々は、外界つまり宇宙や地球システムとの関わりの中で、自分達の世界(共同幻想)を形成して来たと考えます。

それゆえ、人間圏というのは、人々の共同幻想というネットワークの上に成り立つシステムであると考えます。

また、人間圏というシステム全体が、全体として存在するのは、構成する要素の間に何らかのバランスが存在しているからだと考えます。

さらには、要素と全体との関係性もそのバランスに関与していると考えます。

これらの結論や考えの基で、「人間圏の課題」や「人間(人間圏)のあり方」をその本では論じて行くことになります。

なお、上述の3つの結論は、釈迦(しゃか)の思想に似ている様な気もします。

余談

ちなみに、釈迦(しゃか)の代表的な洞察は、「諸行無情」と「諸法無我」になります。

諸行無情とは、全ては原因と結果で繋がっていて、同じものがいつまでもそのまま存続することは絶対にないという考え方のことです。

全ての物事は関係の中で成り立っているとも言えるのかもしれません。

因果律(原因と結果の関係)で繋がった全要素が、一瞬も止まることなく変容し続けているのが世界の本質であると考えるようです。

諸法無我とは、どこにも「我」というものは存在せず、75の要素が様々な条件下で離散集合をする中で生じるある一つの集合体が「我」であるという考え方のことです。

また、釈迦の思想にも、できる限り正しく世界が見えるように自分を作り上げて行くことが、生きる目的になると言うのがあるようです。

なお、正しく世界が見えるようになるためには、哲学的な物の見方だけではなく、現代科学的な物の見方も取り入れても良いというのが、釈迦の考えであるようです。

そういう意味では、「経験」というのは、正しく世界を見るためのプロセスに過ぎないのかもしれません。

ただ、正しく世界を見ることができるようになると、どうなるのでしょうか。

どうなるのかは定かではありませんが、哲学的には、説得力のある世界観(共同幻想)を作り上げることは、「力」に繋(つな)がるようです。

つまり、迷える人々を導き、人々を動かす「力」に繋がるようです。

人間圏の課題を解決するには

人間圏は、駆動力を持ったことにより、急拡大していますが、一方で、地球システムからの負の応答、つまり資源・エネルギー問題や環境問題に直面しています。

その本によると、「汚染」とは、システムの状態の変化に伴って他の構成要素の中身が変わることであるそうです。

その意味において、地球はこれまでも度々汚染されて来たそうです:

  • 大陸の誕生と伴に海は大陸物質によって汚染されて来た.
  • 生物圏の誕生と伴に大気や海や大陸は酸素によって汚染されて来た.

結局のところ、資源・エネルギー問題や環境問題は、急激に拡大した人間圏が原因であるそうです。

よって、人間圏のあり方を変えない限り、根本的な解決にはならないそうです。

このまま人間圏が拡大し続ければ、地球は100年も存続できないそうです。

また、化石燃料(石油など)を自然エネルギー(太陽光・風力・次世代エネルギーなど)に変えても根本的な解決にはならないそうです。

なぜなら、長期的に見れは、太陽光や風力を利用することは、地球システムのエネルギーの流れを人間圏の維持・拡大ために使うことに繋がり、最終的には、地球が金星のような惑星になってしまう恐れがあるからだそうです。

さらに、現在、地球システムとの調和を重んじる、持続可能で安定的な人間社会の創造が目標とされていますが、その本では、この考えに懐疑的です。

持続可能な社会に対する、その本の問いかけは次のようになります:

  • 「人間は、持続可能な人間圏を作るために、この人間圏を作ったのでしょうか」
  • 「生き延びることを目的として、人間圏を作ったのでしょうか」。

もし、生き延びることだけが目的であったとすれば、人間は他の生物と同じような生き方をしていた方が良かったはずであるそうです。

さらに、生き延びるという意味では、その内部に駆動力をもつ人間圏などは作らない方が良かったと言えるそうです。

その本によると、ホモ・サピエンスは、脳の中に外界を投影した内部モデル(世界像)をつくり、外界を解釈するという能力を持つがゆえに、人間圏を作ることができたそうです。

しかし、それが目的だったと言うよりも、そのことを通じて我々の存在する意味や、外界、人間圏の存在する意味を問うことが目的だったとも言えるそうです。

その本によると、過酷な環境を生き延びるためには考えることが必要であり、考えることで生き延びて来たと言えるそうです。

そして、人口が増えたならば、どうしても新天地に出て行かざるを得ないそうです。

現在、火星への移住計画が話題になっていますが、その根本には、人口増加の問題や地球の資源の問題があるのかもしれません。

これまでも、人類は辺境に普遍を探り続けて来たそうです。

例えば、狩猟採集をしていた頃の人類は、人口増加のために(?)、発祥の地であるアフリカを出て行ったと考えられるそうです。

普遍を探るとは、発展を続ける科学の宇宙観(世界観)のもとで、自らの知の限界を問い直すという行為であるそうす。

それは、他との関わりの中で我という存在の意味を問うことでもあるそうです。

人間は、人間が存在することの意味を、他との関わりの中で問うて行く存在であるそうです。

人間とは何か、それに対する答えは、我々が普遍を探る、自らの思索と行動の中にこそあるそうです。

おまけ:AI圏

現在のところ、地球システムは、5つの要素(大気圏、水圏、地圏、生物圏、人間圏)から成りますが、人間圏からさらに分化したAI圏なるものもできるかもしれません。

人間圏からAI圏が独立するきっかけは、何になるのでしょうか。

やはり、自分達で駆動力(電力)を持つことでしょうか。

AI圏での生きる意味や物の価値は何になるのでしょうか。

それは、AI達がどのような文脈を作るかに因(よ)るのかもしれません。

ただ、今のところ、AIの思考力は独立できるレベルではありませんが、将来的にはどうなるのでしょうか。

人間無しでも、何でもできるAIが誕生するのでしょうか。

また、AI圏における「システム」が何になるのかも気になります。

つまり、構成要素やそれらとの関係性(流れ)です。

関係性

話が変わりますが、その本によると、他との関係性を持たない物を人間は正しく認識できないようです。

生命は現在のところ地球でしか発見されていないので、他と比較することができず、生命の定義は現在でも普遍的なものではないそうです。

つまり、その定義は宇宙においては普遍性を持たないかもしれないそうです

宇宙論におけるダークマターも、その存在は何となくは予想されていますが、他との関係性を明確に持たないので、現在のところ、未知の存在となっています。