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科学

生命科学から生命システムについて学ぶ

今回は、生命科学の本を読んで、生命システム(細胞、DAN、寿命など)について考えてみたいと思います。

細胞について

細胞、DNA、寿命など生命科学については、吉森保(著)『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(日経BP, 2020)に分かり易く書かれています。

本記事は、この本を参考にしています。

その本によると、人間は約37兆個の細胞から成るそうですが、最初は1つの細胞(受精卵)だったそうです。

そして、細胞(受精卵)は死ぬまでの分裂の数が決まっていて、全細胞が約37兆個になると増殖(分裂)が止まるそうです。

なお、一つの細胞それぞれに、一人の人間を作る全ての遺伝情報が入っているそうです。

ゆえに、体のどこの場所からでもちょっと細胞を採れば、人を一人作ることは技術的には可能であるそうです。

そして、細胞が生命の基本単位になるそうです。

その本によると、生命の特徴は「階層性」と「動的平衡」にあるそうです。

階層性とは、次のようなものです。

  • 種(ホモ・サピエンスなど)                             ↑
  • 個体(人など)                                 ↑
  • 臓器(肝臓、心臓、胃、肺、腎臓など)                            ↑
  • 細胞                                      ↑
  • 細胞小器官(ミトコンドリアなど)                         ↑
  • 超分子複合体(リボソームなど)                         ↑
  • 高分子(タンパク質、DNA、脂質など)

動的平衡とは、中身が変わっているのに、見た目は変わらないことであるそうです

古くなった細胞は死に、垢(あか)などとして排出され、新しく生まれた細胞がそれに置き換わるそうです。

ゆえに、全体としては約37兆個に保たれるようです。

細胞の中身のタンパク質や細胞小器官も日々入れ替わっているそうです。

水は流れて行きますが川が存在するように、人は存在してもその中身は常に替わっているそうです。

つまり、人の外見は大体同じですが、体の中は常に入れ替わっていて、細胞も細胞の中身も入れ替わっているそうです。

やはり、人の体(システム)には、流れ(変化・交換・循環)が必要であるようです。

これは、生命が散逸構造を取っているからだと思います。

散逸構造とは、流れを持つにもかかわらず、形を一定に保つ構造です。

台風や竜巻なども散逸構造を取ります。(恐らく散逸構造=動的平衡です。)

一方で、細胞の中は、細胞生物学者からすると「宇宙」であるそうです。

宇宙は主に重力(引力のみ)が支配的であるようが、細胞は電磁気力(引力と斥力)が支配的であるようです。

ゆえに、斥力(せきりょく=反発力)がある分、細胞の方が宇宙よりも複雑な構造(仕組み)を取れるのかもしれません。

また、細胞の中は、人間が生きる「社会」(都市?)にとても似ているそうです。

例えば、細胞の中には、「工場」「発電所」「病院」などのような役割を果たす細胞小器官(オルガネラ)と呼ばれるものがあるそうです。

また、細胞の中で「働く人」に当たるのがタンパク質であるそうです。

細胞ではタンパク質が主役になるそうです。

タンパク質には職業人だけではなく、細胞や細胞小器官の骨組みになる物もいるそうです。

つまり、細胞内ではタンパク質は働き手であり、かつ建築資材でもあるそうです。

また、社会(都市)にとって物流が大事なように、細胞でも物流が大事であるそうです。

やはり、システム(散逸構造)には、流れが大事であるようです。

細胞内では、発電所や工場などの間に連絡網が張り巡らされ、タンパク質や物資が行き来しているそうです。

細胞全体が合理的に設計されていて、細胞内(都市内)がよりよく回るように、物流がコントロールされているそうです。

恐らく、このコントロール役の大元が電磁気力(引力と斥力)なのだと思います。

細胞は何億年も前から、人間社会の物流網より効率的な、非常に秩序立った物流を持っていたそうです。

なお、散逸構造論によると、細胞のような袋に「物質の出たり入ったりの流れ」があると、その袋内は、無秩序であることはなく、秩序立ったものになるそうです。

そして、細胞内の物を輸送する際には、膜(自由に形を変えられる袋)が使われるそうです。

運びたい物を入れた小さな膜の袋が、工場(細胞小器官)から切り離され、レール上を移動し、目的地の膜に融合してその中身が受け渡さるそうです。

つまり、その膜は「施設の膜」から分離したり、「施設の膜」に融合したりすることができるそうです。

この働きは、電磁気力の斥力引力のためでしょうか。

ちなみに、膜は脂質が集まって並んで出来ているそうです。

ちなみに、上述のレールもタンパク質で出来ているそうです。

DNA・遺伝子・ゲノムについて

DNAとは

DNAは、「リン酸」「糖」塩基」が構成単位となり、その構成単位が鎖状に数多く繋(つな)がって出来ています。

そして、各構成単位の「塩基」は「アデニン(A)」「グアニン(G)」「シトシン(C)」「チミン(T)」の内のどれかを取ります。

遺伝情報は、A、G、C、Tから成る長い文字列(塩基配列)として、DNAに書き込まれています。

ただ、DNAには「遺伝情報をもっている部分」と「もっていない部分」が存在し、遺伝情報をもっているDNAの一部のことを遺伝子と言います。

その本によると、遺伝子とはタンパク質の設計図のことであるそうです。

タンパク質の職業(役割・機能)を決めているのが遺伝子であるそうです。

人には二万数千個の遺伝子があるそうですが、一つの遺伝子は、原則的に一つのタンパク質だけを決めるそうです。

「頭が良い」などの複雑な形質は、沢山の遺伝子が決める沢山のタンパク質が働いて作られるそうです。

逆に言えば、「頭が良い」などの複雑な性質は、一つの遺伝子が決めていることではないようです。多くの要素(遺伝子・環境)が絡(から)み合って出来ている性質であるようです。

そして、DNAの二重らせんは、これら複数の遺伝子(設計図)がズラズラとらせん状に繋(つな)がっている物であるそうです。

つまり、DNAは「遺伝子の集まり」と言うことになるそうです。

そして、遺伝子は「タンパク質を規定する物」になります。

なお、DNAは、2本の鎖がねじれた二重らせん構造をしていますが、なぜ2本あるかと言うと、情報をコピーするためであるそうです。

細胞分裂の際に、二重らせんが一旦ほぐれて、一本の鎖から、鏡のようにもう一本の鎖が複製されるそうです。

ただ、DNAが二重らせん構造をとる理由は他にもあるようです。

例えば、二本鎖では、上図のように塩基同士がくっ付き合うので、他の余計な分子とはくっ付かなくなり、強度も上がるそうです。

また、どちらかの一部に破損や変異が起きても、正常なもう一方があることで修復することができるそうです。

ちなみに、DNAの二本の鎖は同じ遺伝情報を持っていますが、塩基の部分の違いによって区別することもできるようです。

DNAからタンパク質へ

DNAからタンパ質が作られる原理はシンプルなものであるそうです。

なお、タンパク質はアミノ酸が一列に並んだものであるそうです。

アミノ酸とは、アミノ基とカルボキシ基をもつ有機化合物の総称です。

R-CH(NH2)COOH:-NH2アミノ、-COOH=カルボキシ基、-R=側鎖.

アミノ酸の並び方の違いでタンパク質の機能(役割)が決まるそうです。

アミノ酸は100種類以上ありますが、タンパク質を作るアミノ酸は20種類だけであるそうです。

このアミノ酸の並びが、どういう順番でどれだけ繋(つな)がっているかでタンパク質の形や大きさ、働きが変わって来るそうです。

話を戻しますと、DNAからタンパ質が作られる原理は次のようなものであるそうです。

設計図であるDNAの暗号(GATやCTGなど)に従って、その上にアミノ酸を置いて行くだけであるそうです。

都合の良いことに、細胞には、タンパク質を分解したり、酵素で作ったりしたアミノ酸が材料として貯蔵されているそうです。

そのアミノ酸を並べてタンパク質を作るそうです。

ただ、設計図であるDNAの上に直接アミノ酸が置かれる訳ではないそうです。

殆(ほとん)どのDNAは、細胞の中の「核」という細胞小器官の中にしまわれているそうです。

ゆえに、その時に作る分のタンパク質を指定する「遺伝子の暗号」だけを、コピーして核の外に持って行くそうです。

こうした遺伝子のコピー(メッセンジャーRNA)は、核外に出て来ると、そのコピーを読み取る「翻訳係」の所に行くそうです。

翻訳係は「あっ、AGAが並んでいる」と設計図を読み取り、それに相当するアミノ酸を連れて来るそうです。

翻訳係は、次にAAAと並んでいたら、違うアミノ酸を連れて来て並べるそうです。

そうすると、最初のアミノ酸と次のアミノ酸が物理的に結合するそうです。

そうやって、その作業を繰り返すことで、長い分子であるタンパク質ができるそうです。

翻訳係とは、沢山のタンパク質が集まって出来た「超分子複合体」で、翻訳装置(リボソーム)と言っても良いそうです。

ちなみに、翻訳装置には、間にメッセンジャーRNAが通るような隙間があって、遺伝子コピーというテープを読み取って、それに合うアミノ酸を連れて来るそうです。

こうやって、アミノ酸がメッセンジャーRNAの上に順番に一列に並べられるそうです。

コピーの上に並んだアミノ酸は隣同士が既にしっかり結合しているので、バラバラにならないそうです。

その様にして出来上がったタンパク質は自動的に折り畳まれて立体になるそうです。

設計図は平面ですが、上に乗ったものが立体構造になるのが、タンパク質と設計図との大きな違いであるそうです。

アミノ酸一つ一つの性質が違うので、最初はただ一列に並んでいただけなのに、出来上がる形は全く違うそうです。

そして、その形によって働きが変わるそうです。

なお、人間の細胞はタンパク質が動かしているとも言えるそうです。

ゲノムとは

ゲノムとは、人間一人(生物一個体)を作るために必要な遺伝子の集合体のことであるそうです。

遺伝子とは、人間の体の主成分であるタンパク質を決定する設計図(指示書)のことであるそうです。

少し見方を変えると、ゲノムとは、DNAの内容や中身のことで、DNAとは外見、素材、文字列のことであるそうです。

イメージとしては、DNAはハードウェアで、ゲノムはソフトウェアという関係になるそうです。

ゲノムは、DNAの隙間を除いた遺伝子全体を指していましたが、最近になって、隙間もタンパク質の設計図とは別の働きをしていることが分かって来たそうです。

人間の約37兆個の全ての細胞一つ一つにゲノムがあるそうです。

全ての細胞に、本来もう必要ないはずなのに、ゲノムがありますが、なぜなのか理由はまだ分かっていないそうです。

そして、重要なことに、遺伝情報には結構「書き間違え」が生じているそうです。

つまりは、DNAに変異が起こってるそうです。

変異とは、DNAの単語(A、G、C、T)が違うものになってしまうことであるそうです。

例えば、ATCGが、ATGGやATGになります。

細胞が二つに分裂する際に、DNAの二重らせんがほぐれ、それぞれ一本ずつについてコピーを取りますが、その際に写し間違いが起こるそうです。

ただ、人の体はそのミスを訂正するシステムを持っているそうです。

文章の間違いを発見し訂正する「校閲係」のようなタンパク質たちが存在するそうです。

なぜ間違いが分かるかと言うと、二重らせんなので、照らし合わせてチェックすることが出来るからだそうです。

ただ、ミスを発見する専門の校閲係とはいえ、間違いを見逃す時もあるそうです。

なお、DNAは長く秩序立っているので、エントロピー増大の法則のためか、比較的「壊れ易い」という性質を持つようです。

エントロピー増大の法則とは、簡単に言うと、全ての物について、秩序が徐々になくなって行く、と言うものであるそうです。

つまりは、何もかもバラバラになりたがるのが自然の法則であると言うことのようです。

また、もしかすると、DNAの隙間も変異の「起こりにくさ」などに関わっているのかもしれません。

ちなみに、人間のDNAは、哺乳動物の中では最も壊れにくい方に属すようです。

一方で、ネズミのDNAは、最も壊れやすい方に属すようです。

生命システムの謎

恒常性とは

人間の体には恒常性という特徴があるそうです。

恒常性とは、体の状態を一定の状態に保つことであるそうです。

このおかげで、体温や体重は、ある一定の範囲内に収まっているそうです。

恒常性を保つために働いているのが細胞であるそうです。

逆に言えば、細胞の特長は、恒常性の維持であるとも言えるそうです。

例えば、遺伝子のコピーミスが起きても校閲者がいてそのミスを修復すると言う機能が、恒常性の例になるそうです。

また、細胞は、恒常性を維持するために、細胞内の物(タンパク質など)をあえて壊し、作り直すと言う作業(スクラップ&ビルド)を繰り返しているそうです。

なお、タンパク質は細胞の働き手ですが、互いにくっ付いて固まってしまうと、働かなくなるばかりか、細胞の様々な機能を邪魔して、細胞を死に追いやることもあるそうです。

また、細胞や体の中では、全て具体的な物が何かにくっ付いたり離れたりして活動しているそうです。

電磁気力の引力斥力のためでしょうか。

また、生き物は、存在としてエントロピー増大に逆らうシステムであるそうです。

生命は、エントロピー増大に逆らい、秩序を維持して来たそうです。

言い換えれば、システムとしての生命は、驚異的に精緻で巧妙な恒常性維持の仕組みを作り上げて来たと言えるそうです。

老化の科学

その本によると、多くの生き物は、進化の過程で「個の存続」よりも「死」を選択し、種の生存に有利な状態を作り上げて来たのではないか、という仮説があるそうです。

簡単に言うと、死んだ方が種の絶滅は防げる、と言うことのようです。

例えば、死なないとすると、人口爆発による食糧不足の問題(ひいては餓死での全滅)が起こるかもしれないそうです。

ただ、種の進化の問題以前から生命システムの崩壊の問題はあったような気がします。

例えば、生命システムと環境との相互作用の問題、つまりは散逸構造を維持するための流れ(変化・交換・循環)が止まってしまう問題です。

また、人間を含めて、他の多くの生き物はわざわざ老化しているそうです。

老化も死と同じで進化の過程でわざわざそれを選択した可能性が高いそうです。

それはなぜでしょうか。これも死と同じく「種の絶滅を避ける」という説が有力であるそうです。

外敵から身を守る時、子孫を外敵から守るため、老いた個体から犠牲になって行ったと言う論理のようです。

しかし、それでは、外敵がいない生き物の場合は、老化しないのでしょうか(又は老化しにくいのでしょうか)。

システム(散逸構造)には流れが必要だとすると、システムは常に変化・交換・循環している必要があるのかもしれません。

つまり、成長に時間のかかる種ほど老化に時間をかけることもできるのかもしれません(成長↔老化)。

言い換えれば、老化というプロセス(または手段)で寿命を延ばすことができるのかもしれません。

ちなみに、ヒトや大型の哺乳動物は成長に時間のかかる生き物です。

成長だけして老化しない生き物(ハダカデバネズミやアホウドリ)には代わりの代償があるのかもしれません。

基本的には「生まれる」⇒「成長する」⇒「老化する」⇒「死ぬ」⇒「生まれる」⇒…の循環を多くの生き物は上手く利用して来たのだと思います。

なお、生命の寿命は、DNAの壊れ易さで決まってしまうものであるようです。

DNAが壊れてしまうとタンパク質が正しく作れなくなるのだと思います。

人間の場合、120歳前後がDNAの寿命の限界になるようです。

一方で、その本によると、老化は「細胞の老化プログラム」が進むのを止めることで回避できる可能性があるそうです。

つまり、120歳のすぐ手前までは若者のように元気に活動していて、120歳で突然亡くなると言うことが可能になるかもしれないようです。

ただ、若い状態だけを100年近く維持するにはそれなりの代償があるかもしれません。

例えば、結局は、DNAの壊れ易さを回避する方法も同時に考案する必要があるかもしれません。

さらに例えば、老化の代わりに、幼化のような「幼児の状態」に戻るようなプロセスが周期的に必要になってしまうかもしれません。

なお、興味深いことに、自分の子供のDNAはリセットされていて、再び120年前後の寿命限界を持ちます。つまり、古いDNA(壊れかけのDNA)が子供に継承される訳ではないのです。