ヨーク研究所
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学習法

理系研究者の視点から中学生・高校生に知ってもらいたいこと

青いプール

今回は理系研究者の視点から私なりの「中学生・高校生に知ってもらいたいこと」を述べたいと思います。

中学生

勉強する習慣

中学では定期テスト(中間・期末テスト)や高校受験があり、どうしても勉強することになります。

どうせやるからには、中途半端ではなく中1から厳しくやった方が良いと思います。中1から厳しくやる人は多くはないので、中1からやると後々得です。

そこで、小学校であまり勉強をして来なかった人は、まず勉強する習慣を身に付ける必要があると思います。勉強する習慣を身に付けるためには、厳しい塾に通うのが良いと思います。

小学校の時に勉強して来なかった人は、近所のあまり厳しくない塾に友達と一緒に入ってしまうかもしれませんが、これは良くないと私は思います。

中1から厳しい塾で頑張って、とにかく定期テストで良い成績を取ることを目指して下さい。

良い成績が取れるようになると、不思議なことに良い成績を取ることに夢中になると思います。つまり良い成績でないと許せなくなると思います。ここまで来れば第一ステップは完了です。

厳しい塾

厳しい塾で学ぶべきことは、独断と偏見で申し上げると以下のことです。

  • 勉強する習慣
  • 暗記法(記憶を定着させる方法)
  • 勉強の計画の立て方(勉強法や受験戦略など)
  • 自己管理・自己理解(自分の長所・短所や特性を知る)
  • 独学法

厳しい塾では、色々と厳しく指導してくれるので、受け身になりがちだと思います。しかし、塾に慣れて来たら自分の頭のどこかで「塾に通わなくても良い成績を取るにはどうすべきか」ということを考えてみて下さい。なぜなら高校では塾に通わず独学で勉強したいからです。

厳しい塾を選ぶ時のポイントは、独断と偏見で申し上げると以下のようになります。

  • 個別指導の塾 又は 少人数制指導の塾
  • 難関高校合格の実績がある塾(成績の良くない生徒の成績を伸ばすノウハウがある塾)
  • 大学生ではなく専任の先生が教えてくれる塾
  • 自習室がいつでも使える塾
  • 丸暗記を押し付けるのではなく、きちんと理由や本質を説明してくれる先生のいる塾

なお、塾は友達と一緒に探すのではなく、親と一緒に体験授業などを受けてみて決めるのが良いと思います。

また、定期テストではなく実力テストで成績がなかなか伸びない場合は塾を変えることを検討しても良いと思います。なぜなら、定期テストで良い点を取らすことよりも実力テストで良い点を取らすことの方が難しいからです。つまり、実力テストの成績を上げられない塾は指導法に問題がある場合もあると思います(もちろん生徒の個人差もあると思います)。

推薦入学

公立高校を一般受験する場合、国語(古文・漢文含む)、数学、英語、理科、社会の受験勉強をする必要があります。理系研究者の視点からすると、国語(古文・漢文除く)、数学、英語の学力テストで十分だと私は思います。

古文・漢文、理科、社会の受験勉強をするくらいなら、自分の将来のためになることに時間を使った方が良いと思います。

ゆえに、推薦で高校に入学するのが良いと思うのですが、公立高校の推薦入学は難易度が高いので、結局それらの受験勉強をするか私立高校に推薦か一般で入学しなければならないのかもしれません。

ちなみに、アメリカでは高校の入学試験はありません。アメリカでは高校までが義務教育です。ゆえに、受験勉強をする必要がありません。つまり、アメリカの優秀な生徒は、自分の将来のためになることに受験勉強の時間を使うでしょう。例えば、宇宙やプログラミングが好きなアメリカの中学生は、宇宙やプログラミングの高度な勉強を自分でどんどん進めることができるのです。

理系研究者の視点からも、中学の理科の勉強は学校の授業と定期テストで十分だと思います。受験勉強のために無理に暗記したりする必要はないと思います。特に中学や高校の物理は数学をあまり使わずに説明しようとするので、本質的なことが掴めない生徒もいると思います。つまり、中学や高校の物理や化学は中学生や高校生の教育のために作られた物理や化学であり、研究者が面白いと感じている本来の物理学や化学の姿とは違うと私は思っています。

実際に、中学の理科の教科書を読んで、理科に強い興味を抱いた人は少ないと思います。理科に強い興味を抱いた人の多くは、理系の啓蒙書や分かり易く書かれた入門書を読んでいると思います。

部活動

体力づくりと言う意味でも、体育系の部活に入るのは良いと思います。理系研究者の視点からも、実験系の研究だけでなく、理論系の研究でも体力は大切だと思います。

また、海外の研究室では、研究後にメンバー同士でスポーツを楽しむことがしばしばあります。日本の研究室でもあると思いますが、海外の学生や研究者の方がスポーツに積極的な印象があります。例えば、英語が苦手でもスポーツを通して他のメンバーとコミュニケーションをとることができます。

ハーバード大学の学生の半分以上は何らかの楽器を演奏できるらしいです。ゆえに、文化系の部活でも将来何かの役に立つことはあると思います。

定期テスト前しか勉強しない人のために

塾や部活そして定期テストと、中学生は忙しいと思いますが、塾の宿題は別として、定期テスト前の2週間ぐらいしか長時間勉強しないというのは、非常にもったいないと思います。

定期テスト期間中と同じくらい毎日勉強することはないと思いますが、毎日の勉強時間の積み重ねは大きいと思います。

塾の宿題や定期テストの勉強以外で、自主的に何かを学んでいる中学生は将来有望だと思います。

例えば、塾の宿題がある時や定期テストの時期はやらないけれど、時間がある時は

  • 英検の準2級や2級の合格を目指して勉強している中学生
  • 物理学の啓蒙書や入門書を読んでいる中学生
  • 数学の微分・積分を勉強している中学生

は理系研究者の視点から見て素晴らしいと思います。

ただ、中学生で真に学問に目覚めている人というのはかなり少ないと思います。親が研究者や大学教員だったりすると、中学生の時には既にかなり高度な勉強をしている人もいるみたいですが、学問に目覚めているかは不明です。

受験勉強を一生懸命すると、大学生になった頃には疲れ果ててしまい勉強しなくなる人も多いです。一方、学問に目覚めている人というのは、大学生になっても夢中で学問を楽しんでいます。なお、目覚めている人の中には受験勉強に興味のない人もいます。ゆえに、学問に目覚めていても必ずしも東大や京大に合格している訳ではないです。

国語(古文・漢文除く)で学ぶべきこと

理系研究者でも国語力は必要です。論文や専門書を読んだり、論文や研究費の申請書を書いたり、他の研究者から投稿された論文の審査をしたり、自分が投稿した論文の審査結果に回答する必要があるからです。論理的に文章を読んだり書いたりすることを心掛けると良いと思います。

ただ、私は国語の授業で文章の論理構造を把握する方法を習った記憶がないです。塾や予備校では入試問題を解くためにそれを教えてくれると思います。数学が好きだった国語の先生に習うと良いと思います。感覚的に教える国語の先生には習わない方が良いです。正解の根拠や正解に至るプロセスを論理的に説明してくる先生の指導を受けると良いと思います。

国語の成績は小学校の時の読書量や漢字・語彙の記憶量に強く依存することが多いので、なかなか成績を伸ばし難いと思います。日頃から少しづつでも読書や作文の練習を続けたり、分からない言葉の意味を辞書で調べたりするしかないのかもしれません。

高校生

大学選び・大学受験のヒント

理系研究者の視点からすると、大学の学部の授業でその後の研究に差が付くことはほぼないと思います。つまり、独学力さえ身に付いていれば、ある程度以上の大学ならばどの大学に通ってもあまり変わらないと思います。要は、大学での勉強は自分のやる気次第です。

実際に、研究では国際的に有名な教授でも授業は分かりにくかったり、研究ではぱっとしない教授でも授業は分かり易かったりします。余談ですが、研究の世界では「研究ができる人ほど人に教えたがらず、研究ができない人ほど人に教えたがる」とまことしやかに言われています。

という訳で、理系研究者を目指している人はあまり大学名にこだわる必要はないと思います。研究は大学院から本格的に始まるので、こだわるなら大学院の方にした方が良いです。

実際に、どの中堅大学にも東大や京大の大学院に進学される方は一定数いらっしゃいます。この進学コースは俗世的な受験競争に巻き込まれずに自分のペースで学問を楽しめるので、学問に目覚めている人にはおススメです。ちなみに、アメリカでも普通の大学から一流の大学院に進学することはよくあることです。

なお、理系研究者を目指している人は、浪人しない方が良いかもしれません。数学や理論物理系では若いと言うだけで価値があったりする場合もあるからです。

大学の入学資格

私の独断と偏見に基づく意見になりますが、大学の入学資格は

  • 独学ができる
  • やる気がある 又は 学問に目覚めている

で十分だと思います。この2点を数値化するのは難しいと思いますが、日本の大学の一般入試と違いアメリカの一般入試はこのような所を審査していると思います。実際に、アメリカの入学審査は、ハーバード大学のような超難関大学でも

  • 高校の成績
  • SATと呼ばれる共通テスト(国語と数学)
  • エッセー
  • 推薦状
  • 課外活動
  • 面接

で決定されるようです。日本のAO・推薦入学に似ていると思います。

一方、日本の国立大学を一般受験する場合、国語、数学、英語、理科、社会の受験勉強をする必要があります。やはり、上記のアメリカの一般入試と比べると、日本の一般入試は暗記していることを重視しているように思えます。

繰り返しになりますが、理系研究者の視点からすると、物理や化学の受験勉強をするぐらいなら、大学の物理学や化学の勉強をした方が将来のためになると思います。時間がもったいないです。

なお、アメリカの高校では大学レベルの授業も履修することができ、良い成績をとれば大学進学時に単位として認められる場合もあるようです(大学レベルの授業での好成績は大学入学審査においても有利に働きます)。また、アメリカの高校生は、日本の予備校のような受験用の学校に通うことはほぼないようです。高校の授業に集中すれば良いので優れた方針だと思います。ただ、授業の質はまちまちのようです。

研究者への道

高校の理科(物理・化学)の授業は無駄だとは思いませんが、将来的に役に立つものでもないと思います。ゆえに、理系研究者になりたい人は、簡単な微分・積分やベクトルの概念を学んだ後に、高1からでも大学レベルの物理学や化学を分かり易く教えてくれる大学教員の授業を聞いてみたり(YouTubeでも聞けるかも)、最先端の研究をしている研究者の話を聞いてみたりすると良いと思います。

高校生の時に、何らかの知的刺激を受けて、学問に目覚め、大学に入学するのが理想かもしれません。

ただ、学問に目覚めるきっかけや時期は、個人によってかなり違います。また、同じ物理の授業でも教える人によって目覚めるきっかけになったり、ならなかったりします。

独学で受験勉強

高校生になったら、受験勉強も独学でするのがおススメです。

大手予備校に通えば良い大学に入学できると考えがちですが、高1から予備校に通っても成績が伸びないことも多いと思います。予備校の授業を2時間受けるなら、2時間自分で勉強した方が成績が上がると思います。つまり、予備校の授業を受けただけでは、成績は上がりません。予習・復習が必要ですが、2時間の授業の他にさらに予習・復習の時間を取ることは多くの高校生にとって容易なことではありません。

特に、予備校の数学の授業は受講しない方が良いと思います。数学は教科書や基礎的参考書で定義や概念、定理・公式の証明、練習問題を学んだ後に『大学への数学(1対1シリーズ)』などの丁寧な解説が付いた演習書で独学して、どうしても分からない箇所のみ高校の先生やネットで尋ねるというサイクルを繰り返すと効率的に実力を付けることができると思います。

ただ、自宅では集中できないと思う人は、自習室だけ利用できる予備校や塾も最近ではあるようなので、それを利用すると良いと思います。さらに、受験勉強の計画の相談や受験勉強の進展具合を管理してくれる塾もあるようです。独学の場合、自分の好きな科目のみ勉強してしまったり、受験勉強の計画・戦略が甘かったりするので、そのような支援・管理サービスを利用してもよいかもしれません。しかしながら、ネット上にも独学で受験勉強を乗り越えるヒントがたくさん載っています。

また、確かに、予備校の先生の中には非常に本質的で将来的にもためになる授業をされる先生もいらっしゃいますので、オンライン授業や春・夏・冬期講習などで受講する価値はあったりします。そういう先生の授業はハイレベルかもしれませんが何とか高1・高2で受講したいところです。なぜなら、高3で素晴らしい授業を聞いても、その「教え」を受験に適用・反映できないこともあるからです。つまり、素晴らしい授業での「教え」は小手先の受験テクニックではないので、身に付けるのに時間がかかったりします。