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科学

ビジネス書から新しい価値を創造する手法を学ぶ

今回は、ビジネス書を読んで、新しい価値を創造することについて考えてみたいと思います。

深層心理(インサイト)

ビジネスにおける新しい価値の創造については、大松孝弘(著), 波田浩之(著)『「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方』(宣伝会議, 2017)に分かり易く書かれています。

本記事では、この本を参考にしています。

市場が成熟化し、だいたいの商品やサービスが一定水準を充たす様になった時代において、自分の商品やサービスに、新たな価値を創造するには、どうすれば良いのでしょうか。

その本によると、消費者の深層心理(インサイト)、つまり、消費者を動かす隠れた心理を解き明かし、消費者の「隠れた欲求」に応えることができれば、それが新たな価値の創造に繋(つな)がるそうです。

ここで、深層心理(インサイト)とは、その人に変化をもたらすことに結び付く隠れた心理(心の働き)のことであるそうです。

通常の意味での深層心理は、普段は意識していない心理(心の動き)のことで、本人も気が付いていない無意識の領域の心理のことである様ですが、両者はだいたい同じものと考えても大丈夫だと思います。

(なお、その本では、インサイトという用語で統一されています。深層心理という言葉は出て来ません。)

その本によると、人間の思考や行動は「5%の意識」と「95%の無意識」とで成り立っており、その「95%の無意識」も様々な意思決定に関わっている、という定説が脳科学にはあるそうです。

意識は「氷山の一角」に過ぎず、人間の行動には無意識の影響が大きいそうです。

なお、深層心理を解き明かすとは、人がぼんやりとイメージしていること、何となく心の中に抱いていることをできるだけ具体的に引き出すことを指すそうです。

無意識的な心理を取り扱うので、この引き出しはなかなか難しいそうです。

行動経済学

行動経済学では、「消費者は、自分の行動(心理)を正しく説明できない」と言われているそうです。

実際に、その本によると、消費者へのアンケート調査は、あまり意味を成さないことも少なくないそうです。

つまり、アンケート調査での回答は、真意や本心と言う訳ではなく(深層心理ではなく)、建前であったり、後付けの理由であったり、ありふれた社会的な傾向を反映したものに過ぎなかったりする場合も少なくないようです。

また、消費者に「何が欲しいのか」を問い掛けても、答えられないそうです。

それは、消費者自身も何が欲しいのかを分かっていないからであるそうです。

Appleのスティーブ・ジョブズ氏によると、人は形にして見せてもらうまで、自分が何を欲しているのか分からないものであるそうです。

また、行動経済学では、「人間が合理的な行動をする存在である」という考え方を否定しているそうです。

つまり、人間は、必ずしも論理的に正しい行動をする訳ではないそうです。

例えば、人間には認知バイアスが働いており、自分の利害、自分の希望、過去の経験、先入観などに影響され、理性的とは言えない行動を往々にしてとることがあるそうです。

実際に、「ここまでやって来たから」「これだけお金を使って来たから」という理由だけで、合理的に考えれば損をすると分かっていることを人は続けてしまうことがあるそうです。

さらに、人間には認証バイアスが働いており、何かを証明しようとする時、自分にとって有利な情報ばかりを集めて、反証になる情報は無視したり、集めようとしなかったりする傾向があるそうです。

ビジネスにおける「創造の原理」

その本によると、ビジネスにおける「創造の原理」は次のようになるそうです:

「意識の下に隠されている、消費者の深層心理を解き明かし、それを的確に刺激するアイディアを提供することによって、商品を買ってもらったり、行動を起こしてもらったりする」。

無意識に目を向けるのが、最大のポイントです。

本人も気が付いていない不満を解消できる価値(便利さ・心地良さ・満足感など)を提供することが、成熟した市場で上手くビジネスをする原理になるそうです。

この原理は、これまでの価値の延長線上にはない、新たな階層の価値を提供することの道しるべになり得るそうです。

非常に短くまとめると、人の心のバランスを取れば良いのだと思います。

言い換えれば、人の心の隠れた偏りを平らにする天秤を常に想定して企画を立てれば上手く行くと言うことだと思います。

つまりは、消費者の深層心理にある隠れた不満や欲求に対して、その不満や欲求を充たす価値の提案(企画・コンセプト)を考え出し、その企画構想に基づいて具体的な策を実行すれば上手く行くと言うことのようです。

ただ、もちろん、そもそもの「隠れた不満や欲求」を読み間違えてしまうと、上手く行きません。

例えば、健康志向でヘルシーな食べ物が望ましいとされる時代背景においては、人の心には、たまにはヘルシーとは言えない物を思いっ切り食べてみたいと言う反作用的な欲求が生まれているはずと客観的に察知できたとします。

すると、後は、分厚い肉を提供するという企画を立てて、具体策として分厚い肉のハンバーガーを売り出すことなどをすれば上手く行くと言うことになるようです。

ちなみに、あるチェーン店では、ヘルシーなハンバーガーを売り出しても、あまり売れなかったそうです。一方で、分厚い肉のハンバーガーはヒットしたそうです。

VS

なお、「熱力学の第二法則」に従えば、開放系において、内界を秩序立てるには、外界により多くの「乱れ」(=熱)を発散しなければならない様です。

善と悪の二項対立

その本によると、人の欲望は天使と悪魔の両面で捉えると良いそうです。

つまり、人間の心理には、「表と裏」の2つの側面があると言うことのようです。

人の心は正しい美しいことばかりではないと理解することが、ビジネスでは大切であるようです。

その本によると、人間はそのような「悪」の心から逃れることが難しく、人間を動かす力は「善」よりも「悪」の方が強い、と言うのが、人間の本質であるそうです。

悪と善の両面を見なければ、人間を全て理解することはできないそうです。

誰の心にも悪魔と天使がいて、その時々に応じてどちらかが顔を出し、せめぎ合っているそうです。

その行き来や葛藤こそが、人間らしさであるそうです。

悪の心理(悪の欲望)は、人を動かす力が強いが見えにくく、無視するとキレイ事で一面的な人間の理解に終わってしまうそうです。

やはり、人間には、二項対立的な概念を無意識の内に作り出し、そのバランスを取るように動く傾向があるのかもしれません。

イノベーション

その本によると、イノベーション(革新的変化)に必要なのは「非連続性」であるそうです。

成熟した市場において、価値を感じてもらうためには、「顧客のニーズに応える」と言った既存の考え方の延長線上にはない「新しい価値」を感じさせなければならないそうです。

なお、顧客のニーズは、顕在化しているので、深層心理ではないそうです。

これまでの枠組みの延長線上にはない、新しい価値を創造することが、イノベーションであるそうです。

これは、哲学や科学哲学の世界で言われている、階層構造の変化のことなのかもしれません。

つまり、「パラダイムシフト」「創発」「コペルニクス的転回」と呼ばれているものが、イノベーションなのかもしれません。

階層構造における、階層の変化、一段上の階層に上がることが、イノベーションなのかもしれません。

その本によると、イノベーションを阻むものは、既成概念(従来のやり方)であるそうです。

既存路線で大差のない競争に明け暮れるのではなく、戦いを全く異なるフィールドに持って行ってしまう発想が大切であるそうです。

例えば、「馬車から鉄道へ」「ガラケーからスマホへ」のような発想の転換が必要とのことです。

階層構造的な進化がないと、物はいずれ売れなくなると言うことかもしれません。

つまりは、顧客を「飽きさせない事」「退屈させない事」や顧客に「つまらないと感じさせない事」「不満(面倒臭さや不便さなど)を感じさせない事」がビジネスの継続や存続に繋がるのかもしれません。

また、どの分野においても、成功するには、表には出て来ていない隠れた何か気が付かなければならないのかもしれません。

ただ一方で、社会や技術の急激な変化は、人の心には負担になるのかもしれません。

頻繁にイノベーションを起こされても、人は付いて行けなくなるだけかもしれません。

極稀にイノベーションが起こるので、人は付いて行けるのかもしれません。

また、スティーブ・ジョブズ氏は、大衆の深層心理を読み解いていたのでしょうか。

何となくですが、ジョブズ氏は、自分の「思い」を優先させていたような気がします。

人の興味・関心

その本によると、人の興味や関心に寄り添うことを意識することが、対象者の深層心理の解明には何より大切なことであるそうです。

顧客(対象者)の興味関心から見えて来る「商品に関する深層心理」と「自分達が提供できる価値」との関係性を対比・分析することで、これまでにない発見に繋がるヒントを得ることができるそうです。

ここに、「ビジネスにおける創造」と「芸術における創造」の違いがあるような気がします。

芸術の場合、作者の興味関心と、鑑賞者の興味関心が共鳴すれば(共感したり魅了されたりすれば)、そこに価値が生まれるのかしません。

一方で、ビジネスでは、対象者の興味関心に寄り添い、そこに焦点を合わせることで「対象者の商品に関する深層心理」を分析し、その心理を充たすために、自分達が提供できる価値(企画・コンセプト)を考え出すことになります。

それゆえ、ビジネスには、強い客観性や分析力が必要になるのだと思います。

ただ、芸術の場合、鑑賞者の興味関心に寄り添い、そこに焦点を合わせることで「鑑賞者の絵画に関する深層心理」を分析し、その心理を充たすために、自分が創作するテーマを決めることはないような気がします。

決めることもあるとは思いますが、まずは作者自身の興味関心に寄り添うことから創作が始まる様な感じがします。

ちなみに、哲学によれば、「価値」は、心の中で、「対象が自己を引き付ける力」が生起することがその起源になるそうです。

そして、欲望」とは、対象に自己が引き付けられる「力」のことを指すそうです。

ゆえに、「価値」は、「欲望」から生まれるものであると言うことができると思います。

従って、その本では、新しい価値を創造するために、人の隠れた「欲望」を客観的に分析しているのだと思います。

おまけ:ビジネスと「財星」

その本によって、新しい価値を創造するビジネスには、以下の能力が必要であることが分かりました。

  • 観察力
  • 分析力(データ分析)
  • 隠れた何かを察知する能力・隠れた何かに気が付く能力
  • 人の深層心理を読み解く能力・寄り添う能力・コミュニケーション能力
  • 客観性・客観的な視点をもつこと
  • 気が利くこと・気が利いたサービスを提供できること
  • 企画・コンセプトを考え出す能力
  • 仕事(作業)を仕組み化したり体系化したりする能力

これらの能力は、陰陽五行的に言うと(四柱推命によると)、「財星(ざいせい)」という星を持つ人の特徴と部分的に一致していると思います。

やはり、ビジネスと「財星」には深い関係があるのだと思いました。

ちなみに、ビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏は、「財星」という星を持っています。

ただ、「財星」という星を持っていれば、必ずお金持ちになれると言う訳ではないようですので、ご注意して頂ければ幸いです。

さらにちなみに、「財星」という星を持つ人は、異性からモテると言われていますが、一方で、ウソつきであるとも言われています(真偽は不明ですが)。