ヨーク研究所
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研究者のなり方

研究者の日常観察:道で3人の人は交わりたがる

今回は、人間の行動パターンについて考えてみたいと思います。

日常生活における観察結果

コロナ禍ということで、人と人の間にはある程度の距離を取ることが推奨されています。

このような背景もあり、私は人と人の間の距離に少し気を配っていました。

すると、次のことに気が付きました:

「交通量の少ない道」で3人の人がそれぞれ個別に移動している時、なぜかこの3人はある位置で交わろうとする傾向がある

例えば、以下の図のような感じです。

左図は3人の人が歩道でそれぞれ個別に移動していることを大まかに表しています。

右図は左図の状態から少し時間が経った状態を表しています。

右図の三者の交わり、つまり三つ巴(どもえ)状態は、避けられないものなのでしょうか。

(もちろん、偶然(たまたま)、三つ巴状態になってしまうこともあるとは思いますが、ここでは、偶然以外の要因を探って行きます。)

この場合ですと、自転車に乗っているCさんが一時停止し、AさんとBさんがすれ違った後に、CさんがAさん続いてBさんとすれ違えば、三つ巴状態は回避できます。

しかし、自転車に乗っているCさんが一時停止することはまずありません。よって、なぜか三つ巴状態になります。

また、Cさんの自転車のスピードは、どちらかと言うと、ゆっくりであることが多いです。

ゆえに、Cさんが上手くスピードを調整すれば、三つ巴状態は回避できるかもしれませんが、なぜかCさんは三つ巴状態になるようにスピードを調整する傾向があるような気がします。

この三つ巴状態を回避するもう1つの方法は、Bさんが建物と建物の間の小道に一時的に待避することです。

しかし、実際には、Bさんが気を遣って小道に待避することはありません。待避するどころか、Bさんはまるで三つ巴状態を望んでいたかのように進んできます。

もしかすると、Aさんが絶妙に一時停止したりすることで、三つ巴状態を回避することができるかもしれません。

しかし、実際には、Aさんもまるで三つ巴状態を望んでいたかのように進んでしまいます。

三つ巴状態になってはいけない訳ではありませんが、なぜか3人の人が道をそれぞれ移動していると、積極的に三つ巴状態になろうとする傾向があるような気がします。

本能的に、人間は一箇所に集まってしまうものなのでしょうか。

また、確率的に言えば、幅のある道を3つの物体がそれぞれ移動する時、3つの物体が上図のように偶然一直線上に並ぶ確率よりも、3人の人が道で三つ巴状態になる確率の方が低くなることはない気がします。

つまり、そこには、深刻なコロナ禍でさえ「三つ巴状態になっても構わない」もしくは「三つ巴状態になりたい(?)」という人間の心理が関係しているような気がします。

ぶつかりたくはないが、近寄りたい心理とも言えるかもしれません。

ただ、「道で3人」という所がポイントで、駅など大勢の人がいる場所ではこの傾向は成り立たないと思います。

急に止まってみました

私は高校生の頃に、帰宅中(夜9時頃)、同じ高校生ぐらいの人と、たまたま歩調が合ってしまい、知り合いでもないのに、なぜか二人で一緒に歩いているかのような状態になってしまったことがありました。

私は、その時、急いで帰宅しようとしていたので、早歩きでしたが、その高校生らしき人も恐らく急いで帰宅したかったのでしょうか、早歩きでした。

よって、二人で一緒に必死に早歩きしている感じになり、私は何とも言えない一体感と同時に違和感を感じました。

高校生の頃の私は、それほど和を乱すタイプではなかったと自分では思っています。ゆえに、やや違和感がありましたが、このまましばらく二人で早歩きを続けることになっても仕方がないとも考えていたと思います。

しかし、実際には、私はその一体感を強引に引き裂くことを選びました。つまり、私は急に止まったのです。

いつもの私ならそんなことはしなかったような気がしますが、その時は、何か新しい事をしてみたかったのか、魔が差したのか、とにかく急に止まってみました。

相手の高校生らしき人は、しばらく早歩きでひとり歩き続け、ふっと私の方を振り返りました。私は暗がりの中でただ止まっています。

その人は、再び早歩きで前進し駅の方へ去って行きました。

みんなで仕事タイプ vs 一人で仕事タイプ

世の中には、次の2タイプの方がいらっしゃるようです。

  • 「みんなで仕事をしたいタイプ」
  • 「一人で仕事をしたいタイプ」

研究者の世界でも、この2タイプの方がいらっしゃいます。

私の勝手なイメージになりますが、実験系の研究者の方は、「みんなで仕事をしたいタイプ」の方が多いような気がします。

「みんなで仕事をしたいタイプ」と言っても、実際にみんなで仕事をする訳ではなく、誰かが居てくれるだけでやる気が出るタイプとも言い換えられます。

一方で、数学系や理論・計算系の研究者の方は、「一人で仕事をしたいタイプ」の方が多いような気がします。

「一人で仕事をしたいタイプ」の方も、本当に一人で研究を完遂してしまう訳ではなく、仲間との議論は大切にしますが、実際の作業や調査は一人で落ち着いてやりたいタイプとも言い換えられます。

私の印象になりますが、やはり数学系の方は、「一人で仕事をしたいタイプ」の方が多いような気がします。

と言いますのは、ある大学の話になりますが、数学科の研究室で夜遅くまで居残って研究している研究室は他の学科と比べると非常に少なかったような感じがします。

つまり、数学系の研究者の方は自宅で一人で研究しているのだと思います。

トラブルが起きやすいケース

「みんなで研究をしたいタイプ」の方が教授で、「一人で研究をしたいタイプ」の方が学生やポスドクだと大変だと思います。

つまり、この組み合わせはトラブルが起きやすいと思います。

「みんなで研究をしたいタイプ」の教授は、一人になれば研究などしないで、どうせ遊んでしまうと考えているため、長時間の間、みんなで研究をやらせようとします。

一方で、「一人で研究をしたいタイプ」の学生やポスドクは、一人の方が遥(はる)かに捗(はかど)り、みんなと居ると何だか落ち着かず集中できないので、直ぐに帰宅しようとします。

タイプの違いのため、両者の間に互いの理解が行き届かないことが少なくないようです。

職業や業界または分野によっても違うと思いますが、一般的には、「みんなで仕事をしたいタイプ」の方の方が多数派なのかもしれません。

もちろん、両方できる方も多いとは思いますが、純度の高い「一人で仕事をしたいタイプ」の方は、職場環境によってはやりづらいかもしれません。

ちなみに、私の独断と偏見になりますが、私の分野では、長時間の研究を要求する教授は、「努力家タイプ」であることが多く、「頭が切れるタイプ」ではないことが多いような気がします。

さらに、私の分野では、「努力家タイプ」の教授は、数学を学ぶことがあまり好きではない方が多い気がします。

リモートワーク

私も学生の頃やポスドクの頃に自宅で研究していたことがありました。

なお、理論・計算系の研究は、パソコンとネット環境があれば出来てしまうことが多いです。

確かに、学生の頃の私は、自宅では徐々にダラけて行いきました。最初は、規則正しい時間帯に研究していたのですが、段々と深夜の方に研究の時間帯がずれて行きました。

その時は明確に意識できなかったのですが、家には(アパートですが)「家の魔力」のようなものがあるような気がしました。やはり、家では(特に独立性の高い家では)自分の好きなことができるので、家に取り憑(つ)かれると、「自分のやるべき事」を見失う感じになってしまいます。

このままでは駄目だと、私はある時期から再び規則正しい時間帯に研究をするようになりました。

結局のところ、リモートワークに慣れるまではダラダラしてしまう時期もあるかもしれませんが、元から真面目に仕事をしていた方は、規則正しいリズムができてしまえばリモートワークでも大丈夫だと思います。

リモートワークで仕事ができなくなってしまう方は、実は元から仕事をダラダラしていた方かもしれません。ただ、「みんなで仕事をしたいタイプ」の方は、誰かと居た方がやる気が出るので、リモートワークには向いていないのかもしれません。