今回は私が子供頃の自分に薦める学習方針(数学・英語)を紹介します。
数学
数学の学習方針
数学は、物理学や経済学などの学問にとって、論理的表現法(簡潔に又は体系的に説明するための記述法)になっていますので、研究者にとって数学の知識はあればあるだけ良いと思います。
ポイントは、大学教養課程の数学(微分積分学、線形代数学、確率・統計学)をできるだけ若い内に学んでしまう事です。
数学の知識の習得は早ければ早いだけ良いと思います。ただ、数学の魅力なり、面白さを感じながら学ぶことが重要だと思います。知識の詰め込みは良くないかもしれません。
数学に目覚める時期(or 覚醒のきっかけ)というのは、個人差があると思いますが、一度目覚めてしまうと「数学にはまる」ようになる(数学に強い関心をもつようになる)のでしめたものです。
「なぜ、若い時に学ぶのが良いのか」と言いますと、これは私の意見で科学的根拠があるという訳ではないと思いますが、数学の学習はスポーツのようなものであると考えるのが良いと思っています。スポーツも何歳からでも始めることができますが、プロのスポーツ選手になるにはできる限り若い内に始めるのが良いと考えるのと似ています。プロのピアニストやプロ棋士に置き換えて頂いても良いかもしれません。
数学専門の個別学習塾
数学専門の個別学習塾に小学生ぐらいから通うのが良いかもしれません。ただ、その際の注意点を以下に列挙しました。
- 数学の学習は個人差が出る(本人が納得できるかどうか)と思いますので「個別」指導してくれる塾
- 受験のための算数・数学を教えると言うよりは、「数学の面白さ」や「数学の美しさ」を教えてくれる塾
- 学年や年齢に関係なく個人の進度で算数から大学教養課程の数学まで教えてもらえる塾
- 最短距離で算数から大学教養課程の数学まで誘ってくれる先生方のいる塾
別の注意点としては、数学科や数学者を目指しているのかどうかです。
数学科を目指されている方には、数の性質や数学的問題自体に興味がある方もいらっしゃるかもしれません。一方、数学が物理学やその他の学問で論理的記述法として使われていることに興味がある方は、数学がそれらの学問分野でどのように応用されているのかを知ると、数学への興味がさらに高まると思います。
例えば、webページを見る限り、八起数学塾や数理科学専門塾phi-φに私は魅力を感じます。ただ、実際にこれらの塾に通学していた訳ではありませんし、これらの塾は上記の注意点を満たす訳でもありません。
私の場合
ちなみに、私の場合、高校1年生の時になぜか数学のテストで点が取れることに気付きました。ただ、数学に強い興味があった訳ではありませんでした(生物に興味がありました)。
高校3年生の春に物理の公式がニュートン方程式から微積分を使うと導けることを予備校で学びました。激震が走りました。そこで、微積分を学ぶ理由や重要性がはっきりし、数学と物理に「はまる」ようになりました。
予備校でその講義を受けるまでは、微積分が何の役に立つのか分かりませんでしたし、物理の公式は偉い学者が実験をして何年もかかって得たものだと思っていました。それが、高校生でも微積分を知っていれば、ニュートン方程式から簡単に導けるのです。数学と物理が繋がった瞬間でした。
ただ、高校3年生で「はまる」ようになっても手遅れかもしれません。ですので、できるだけ早い時期に数学や物理に覚醒することができれば、それだけで将来有望だと思います。
英語
英語の学習方針
英語は研究者にとっても、できればできるだけ嬉しい能力です。
私のお薦めはアメリカで研究者として働き続けることですので、英語の習得は大切です。
ただ、実際に英語を使う機会がないと、中々身に付きにくいと思います。
英語を学ぶ必然性がある環境の中(アメリカに引越すなど)で英語を学ぶと、成長が早いと思いますが、中々そういう訳にも行きません。
やはり、うまいこと多くの英単語・英熟語を覚えることが必要になってくると思います。
英語の学習にも個人差があると思いますが、ここでは二人の英語の先生を紹介したいと思います。
一人目のおすすめ英語講師
一人目は薬袋善郎先生です。薬袋先生の英語は、非常に論理的で、一貫性があり、英語の本質を突いており、丸暗記が好きでない方にはお薦めです。英文の構造を、経験や感覚に頼らず、独自の方法で明確に説明してくれます。
薬袋先生の方法をマスターすると、経験や感覚に頼らず、英文の構造を明確に分析・理解できるようになります。理系の人の方が薬袋英語のファンになりやすいと思います。
ただ、個人差があると思いますので、薬袋先生の授業を一度受けてみて、教材を購入するとかの判断をされるのが良いと思います。薬袋先生の本を読んでみても、「良さ」が伝わって来ないかもしれませんので、薬袋先生の授業を受けてみるのが良いと思います。
私は高校2年生の時に友人の紹介で薬袋先生の授業を受けました。受講するまでは、「誰が教えても英語の授業など同じだろう」と考えていたのですが、薬袋先生の授業は唯一無二だと瞬時に悟りました。
薬袋先生の英語は、英文を精読されたい方向けかもしれません。私の場合、理論物理の論文を精読する必要が多いので、薬袋先生の英語は非常に役に立っています。薬袋先生の英語は大学受験だけでなく、研究者になっても通用すると思います。もちろん、論文を書く際にも非常に役立っています。
例えば、研究者同士である論文について議論していた時、「この人は正しく論文を読めているのだろうか」と思うことがありました。確かに、その論文には精読しないと勘違いしてしまうような英文が含まれていました。
二人目のおすすめ英語講師
二人目は関正生先生です。私は関先生をYouTubeで最近知りました。英語の本質を突いた説明をされており、かつ授業にスピード感があり、これは効果的かつ効率的に英語を楽しんで学べそうだと思いました。
関先生も丸暗記させることを良しとせず、英単語の本質的意味や英語の基本的思考法から多くのことを学べるように工夫されています。
研究者の英語力
国際的には
国際学会で口頭発表を聞いていると、日本人研究者の英語の流暢さが他国の研究者の流暢さより劣ると感じることが私は多いです。日本人研究者より中国人研究者の方が流暢さが高いような気がします。(もちろん個人差はあります。一般的な話です。)
流暢さの差を感じるのは、主語・述語などの語順と発音に関係しているような気がします。
さらに、あるアメリカの学会で口頭発表を聞いていた時、突然ぞろぞろと半数近くの参加者が会場を出て行きました。次の講演があるのになぜ参加者が会場を出て行ってしまったのか不思議に思いました。次の講演をされたのが日本人研究者でした。残念ながら、その方の英語は流暢ではありませんでした。
日本人研究者の場合、「話す」・「聞く」は苦手でも「読む」・「書く」は比較的得意な方が多いと思います。海外の研究者の場合、これが逆なことがあるようです。
実際に、ポルトガル語が母国語の方と同じ研究室になったことがあったのですが、英会話は問題がないようでしたが、研究室のボスによると英語の読み書きに問題があったようです。しかしながら、ボス自身も英会話はできていましたが、英語の文章は「不自然」と言いますか独特な感じがしました。なお、ボスの母国語はドイツ語です。
さらに、論文を投稿した際の審査時には、間違いだらけの英文で人の論文に難癖を付けて来る海外の教授に出くわすこともあります。また、海外の有名な教授が書いた論文でも英語が下手で文意がつかめないこともあります。その論文はたまたま英文校正を受けずに出版されてしまったのでしょう。
脳科学的には
あくまで私の周りの研究者の印象ですが、数学や理論物理、計算プログラミングが好きな人の方が、英語又は英会話が苦手な人が多いかもしれません。
例えば、ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英博士は、英語が苦手なことで有名ですが、一方で数学好きでも有名です。
また、これも私の印象ですが、女性研究者の方が男性研究者よりも英会話が上手な(英会話に積極的な)気がします。一方で、男性研究者は女性研究者よりも数学やプログラミングが好きなことが多いような気がします。
さらに、絵画に特別な才能をもつサヴァン症候群の少女が、8歳から支援学校で言葉を覚え始めると、絵の才能を失ってしまったという事例もあります。
もしこの事例が一般的なものだと仮定すると、益川博士の英語力を無理やり高めてしまっていたら、数学の才能が失われノーベル賞を取れなかったかもしれません(すみません冗談です)。
結局のところ、数学や理論物理、計算プログラミングが得意な研究者が無理して英語を得意にする必要はないのではないかと私は考えています。
将来的には
今後20年以内には、AIによる自動翻訳がかなり実用化されて来ると思いますので、英語の習得が闇雲に重視される時代は過去のものになって行くかもしれません。
また、ノーベル化学賞受賞者の白川英樹博士は、母国語で思考することの重要さをある記事で述べています。
私も英語に苦労していますが、英会話では中学英語が役に立っています。つまり、中学英語でもアメリカで生活できますし、研究留学はできます。ただ、英会話力は中学英語レベルですが、英語の読み書きは研究ができる程度です。
私が研究留学できたのは、研究能力が評価されたからだと思いますので、数学と英語のどちらを重視するかと問われれば、私は当然数学を重視します。