今回は、五行の相互作用の中で最も重要だと思わる「剋(こく)」の働きについて研究して行きたいと思います。
なぜ「剋」が重要なのか
八字(命式)の中には、次の3つの作用が働いています。
- 生(せい):ある五行がある五行を生じる作用.
- 剋(こく):ある五行がある五行を剋(こく)す作用.
- 幇(ほう):ある五行が同じ五行を扶(たす)ける作用(または強める作用).
この3つの作用の内で、最も強い作用が「剋」になります。
最も力量(=エネルギー?)を使う作用とも言えます。
ゆえに、八字に「剋」が現れた場合、そこの解釈にはかなりの注意を払う必要があることになります。
ただ、ここで、「剋」とは「冲(ちゅう)」のことでもあるのですかと思われた方も多いと思います。
「冲」とは地支の間に働く関係ですが、私は「冲」という概念を採用しない小山内流を採用しています。
小山内流では、八字(命式)を全て天干で表現します。
ゆえに、自然に「冲」や「支合」という概念は消え、命式内の作用としては「生」「剋」「幇」の3つの作用のみになります。
言い換えると、小山内流では、地支に蔵干として含まれる天干を一つに決めてしまいます。
そのようなことをすれば、地支に蔵干として含まれている大切な情報が失われてしまうと考える流派の方も多いと思います。
確かに、そうなのかもしれませんが、逆に紛(まぎ)らわしい弱い情報を切ることですっきりし、くっきりと大切な情報が浮かび上がって来ることもあると思います。
小山内流では、まず三合会局(十二運の根拠)を使わないことで既存の蔵干をすっきりさせます。
なお、三合会局を使わない流派は、小山内流だけではありません。他にもいくつかあります。
簡単に言いますと、小山内流の蔵干は「旺相死囚休(おう・そう・し・しゅう・きゅう)」の考えに従っています。
小山内流の蔵干につきましては、小山内彰(著)『基礎から最高峰を目指す 四柱推命の本』(上・下巻)(2019)に詳しく書かれていますので、そちらをご覧下さい。
YouTubeでも簡単に説明されています。
八字(命式)を全て天干で表すと、「剋」の重要性が明確になります。
ちなみに、「剋」には「滞(とどこお)り」という意味があるのではないかと考えています。
「滞り」とは、 物事が順調に進まないことです。
ゆえに、「剋」は、その人の気質や行動傾向だけでなく実際の事象(悩みや問題)を解釈する際に重要になるのだと思います。
ただ、「剋」には「滞り」という意味だけではなく、「囚(とら)われる」や「引き付けられる」などの意味もあると思います。
逆に、「生(せい)」という作用は、比較的スムーズな物事の流れのことであると考えることができると思います。
ただ、「生」が多過ぎるとまた問題になります。
また、「幇(ほう)」と言うのは、同じ干が重なることで、その干の特徴や影響が強調されることになると考えることができます。
これも良い面と悪い面があると考えられます。
剋の強弱
実は、「剋」には「強い剋」と「弱い剋」があります。
「強い剋」と言うのは、陽干が陰干を剋す「剋」で力量的に最も大きなダメージになります。
例えば、次のような剋が「強い剋」になります。
- 時 日 月 年
- 〇 乙←庚 〇
- 〇 〇 〇 〇
逆に、「弱い剋」と言うのは、陰干が陽干を剋す「剋」で力量的には弱いダメージになります。
例えば、次のような剋が「弱い剋」になります。
- 時 日 月 年
- 〇 庚←丁 〇
- 〇 〇 〇 〇
これらは力量的な視点における「剋」の強弱なのですが、実際の事象(気質や行動傾向など)としてもその強弱の差が影響するようです。
つまり、強く剋されている人は、「やっぱり強く剋されているだけの事はあるよね」という事象に繋(つな)がり易いようです。
逆に、弱く剋されている人は、「やっぱり弱く剋されているだけの事はあるよね」という事象に繋がり易いようです。
なお、ここで「力量的な視点」と言うのは、日干の強弱を決める視点のことです。
そして、日干の強弱は主に健康面(体力面など)を見る視点になります。
また、次のような「剋」は「通常のダメージの剋」になります。
- 時 日 月 年
- 〇 庚←丙 〇 陽干が陽干を剋す「剋」
- 〇 〇 〇 〇
- 時 日 月 年
- 〇 乙←辛 〇 陰干が陰干を剋す「剋」
- 〇 〇 〇 〇
剋のキャンセル
実は、剋されてる干は、他の干を剋すことができなくなります。
例えば、次のような場合です。
- 時 日 月 年
- 〇 庚 丙←壬
- 〇 〇 〇 〇
丙は壬に剋されているので、丙は庚を剋すことができなくなります。
ただ、丙は庚を力量的に剋すことができないのですが、この人は官殺の性質(特徴)を一応は持っていることになります。
つまり、壬「食傷」が丙「官殺」を剋しているので、「食傷」の性質を帯びた「官殺」になることが予想されます。
例えば、かなり自発性(衝動性)や表現力がある「官殺」になると予想されます。
また、次のような場合、剋はキャンセルされないことになります。
- 時 日 月 年
- 〇 庚←丙←癸
- 〇 〇 〇 〇
丙(=陽干)は癸(=陰干)に剋されているのですが、「弱い剋」なので、丙は庚を剋すことができます。
剋の4つ
「剋」が八字のどこに現れるかでその大まかな解釈(意味)が異なって来るのではないかと私は思っています。
つまり、「天干に剋があるのか」「地支に剋があるのか」「天干と地支の間に剋があるのか」「八字と大運の間に剋があるのか」で「剋」の解釈(意味)が異なるのではないかと考えています。
天干の剋
天干に「剋」がある場合、通変を中心として「剋」を解釈するのが良いのではないと思います。
比較的わかり易い解釈ができるような気がします。
- 時 日 月 年
- 〇 庚←丙←癸
- 〇 〇 〇 〇
例えば、この場合は、癸「食傷」が丙「官殺」を剋しています。
よって、例えば、次のような解釈ができるかもしれません。
- 行動力(発散力)で逆境や困難を跳ね返すことがある
- 基本的にはシステム(組織)に従うタイプだが、時折自由を求める
- 公務員として勤めて来たが、最終的には自営業をした
地支の剋
地支に「剋」がある場合は、通変で「剋」を解釈するよりも通変以外の解釈を考えた方が良いのではないかと思っています。
例えば、次のような場合は、丙「財」が庚「印」を剋しています。
- 時 日 月 年
- 〇 壬 〇 〇
- 〇 庚←丙 〇
よって、「財」の客観性を持った「印」の性質が出る(創発する)ことになると思います。
つまり、この庚「印」を持つ人の気質は、通変の意味から、次のキーワードで解釈できるかもしれません:
「常識的」「主観と客観のバランスが良いタイプ」「堅実」「確実性を求めるタイプ」.
しかしながら、次のような場合はどうでしょうか。
- 時 日 月 年
- 〇 壬 〇 〇
- 〇 庚 丙←壬
丙は日干「壬」に隣接していないため、日干(自分)の性質(気質)には直接的には関わっていないことになります。
そこで、私は「地支の剋」は「地支の剋」で独自の意味を持つのではないかと考えています。
「地支の剋」の本質的な意味は、「離合」だと勝手に思っています。
つまり、離れたり、くっ付いたり(合したり)、滞(とどこお)ったり、捗(はかど)ったりすると言うのが、地支における「剋」の基本的な意味ではないかと考えています。
より具体的には、以下のような感じになるのではないかと思っています。
年支と月支の剋=離合=移動・引越し・移住・転職・転々・海外・出会い・別れ、社会的活動基盤の変化、生成と発展.
月支と日支の剋=離合=戦い、挑戦、勝負、試合、対人関係での争い、対立(理想と現実のギャップ)、矛盾(理不尽)、膠着状態(定着)、活動基盤の問題、家庭問題、健康問題、価値観の変化、生成と発展.
日支と時支の剋=離合=葛藤、心の迷い(ゆらぎ)、ジレンマ、心の対立(矛盾)、心の封鎖、健康問題、家庭問題、離婚、価値観の変化、生成と発展.
地支の剋には、負の面もあるのですが、その面を乗り越えることができれば、「生成と発展」が待っていることになります。
生成とは、新しい物を生み出したり、新たなアイディアを生み出したり、結婚したりすることを指します。
ただ、地支に剋がない人は、活動基盤に関わる問題が起きないのかと言われると、もちろん、そのようなことはないと思います。
地支に剋がある人は、活動基盤に関わる問題が起きたとしても、それをチャンスに変えられる可能性を持っていると言うべきなのかもしれません。
天地の剋
それでは、天干と地支の間に「剋」がある場合は、どのように解釈すれば良いのでしょうか。
例えば、次のような八字がその例になります。
- 時 日 月 年
- 庚 辛 己 丙
- ↓ ↓ ↓
- 甲 甲 壬 甲
一つは、やはり通変で解釈する方法だと思います。
- 月柱:日干「辛」の気質を表す己「印」は壬「食傷」の性質を帯びている
- 日柱:日干「辛」は甲「財」の気質を持っている
- 時柱:日干「辛」の気質を表す庚「比劫」は甲「財」の性質を帯びている
もう一つは、定位(=柱の意味)を利用する方法だと思います。
- 月柱:対人関係、社会性、社交性に「滞り(食い違い・対立)」や「囚われ」がある
- 日柱:嗜好、価値観、健康状態に「滞り(食い違い・対立)」や「囚われ」がある
- 時柱:才能、特技、成果、心理に「滞り(食い違い・対立)」や「囚われ」がある
もう一つは、異常干支の考え方を少し取り入れて次のように解釈します。
天地の剋=両性具有(二面性・重ね合せ状態)、二律背反(不安定さ・揺らぎ)、異常と異能.
(ここで、天地の剋とは、天干と地支の間の剋のことです。)
以上が私の解釈になりますが、確定的なものではありません。
四柱推命の書籍にも天干と地支の間の剋に関しては、ほぼ全く記述されていないのが一般的だと思います。
また、ここで重要なことは、「天干の剋」や「地支の剋」の方が「天地の剋」よりも優先されると言うことです。
つまり、例えば「天干の剋」と「天地の剋」が両方存在した場合、または「地支の剋」と「天地の剋」が両方存在した場合、「天干の剋」または「地支の剋」の方が優先されます。
- 時 日 月 年
- 癸←戊 丙 戊
- ↑ ↑ ↑
- 己←乙→戊←甲
この例では、甲と乙は「地支の剋」と「天地の剋」の両方に関わりますが、「地支の剋」の方が優先されます。
つまり、乙と甲は「地支の剋」の方にまず最初にエネルギー(力量)を使います。
ただ、「天地の剋」につきましては、まだ謎(未解明なところ)が多いので今後も研究を続けたいと思います。
大運の剋
「四柱八字」と「大運の干支」との間の「剋」は、複雑なので簡単には説明できませんが、一般には次のことが言われています。
- 八字で悪い作用をしている干(忌神)が大運で剋されると、吉の事象が現れ易い
- 八字で良い作用をしている干(用神)が大運で剋されると、凶の事象が現れ易い