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科学

腸と脳の関係性について学ぶ

今回は、生命科学の本を読んで、腸と脳の関係性について考えてみたいと思います。

腸とは

腸と脳の関係性については、國澤純(著)『9000人を調べて分かった腸のすごい世界』(日経BP, 2023)に分かり易く書かれています。

本記事は、この本を参考にしています。

その本によると、の第一の機能は、食べた物の消化と栄養の吸収、および不要な物の排出であるそうです。

口から取り込まれた食べた物は、食道を通って胃に溜め込まれ消化されます。

そして、消化途中のドロドロ状態で内容物が腸に入って来るそうです。

それらをさらに酵素なとで消化し、血管を通じて栄養を体内に吸収するそうです(つまり栄養が全身(全身の器官)に供給されることになるそうです)。

そして、不要な物や有害な物は便として排出するそうです。

また、腸には、腸内細菌が共生していて、胃で消化できなかった食物繊維などを分解して吸収できるようにしたり、分解物を腸内活動に利用できるようにしたりしてくれるそうです。

例えば、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸は、腸内を弱酸性の状態に保って有害菌の繁殖を防ぐ働きをしたり、エネルギー源として腸の活動(ぜん動運動)を支えたりしているそうです。

ぜん動運動とは、腸の内容物を先へ押し出して移動させるウネウネ運動のことです。

その本によると、腸の第二の機能は、免疫機能であるそうです。

腸は、口から取り込まれた食べ物が吸収される「体への入り口」となっているそうで、腸では

  • 「体に吸収すべき物(食品や栄養)」と
  • 「吸収せずに排出すべき物・危険な物(病原体やアレルゲンなど)」

がごちゃ混ぜになっているそうです。

そのような中で、正しく選別を行い、危険な物などが侵入しない様に防衛しているのが「腸の免疫」であるそうです。

「体の番人」としての腸には、体全体の免疫細胞のうち約70%が集中しているそうです。

この集中は、常に「外敵」の脅威にさらされていることが原因かもしれないそうです。

腸内の免疫細胞は、腸内細菌のような有益な異物に対しては排除せず利用し、ウイルスや病原細菌・ホコリなど体に害をなす物は攻撃して排除しているそうです。

このように、腸内の免疫細胞は、有益なのか有害なのかの判断を常にしているそうです。

なお、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸は、免疫細胞の攻撃性を制御する役割も担っているそうです。

免疫細胞の攻撃性(免疫力)が強過ぎると、花粉症や食物アレルギーなどに代表される「異物への過剰反応」を引き起こしてしまうそうです。

腸と脳の共通点

その本によると、腸と脳にはいくつかの共通点があるようです。

記憶

まず、腸の免疫細胞は、「記憶」という機能をもっているそうです。

腸の免疫細胞は、過去に侵入したことのある異物を記憶していて、次に侵入して来た時に迅速かつ強力に攻撃するそうです(獲得免疫)。

なお、ワクチンは、獲得免疫の「記憶力」を利用しているそうです。

腸以外の免疫は、異物の種類に関わらず、とにかく体への侵入を防ごうとするそうです。

腸の免疫は、異物全てを攻撃することはないそうです。

腸の免疫は特別で、有害な異物と有益な異物を選別するそうです。

有害な病原体に対しては攻撃して排除し、有益な栄養や腸内細菌に対しては自らの攻撃性を制御して、排除することなく利用できるようにするそうです。

脳も記憶の機能を持っているので、腸の免疫細胞の「記憶」と脳の記憶の間には何らかの繋(つな)がりがあるかもしれませんが、それらはメカニズムが違うようです(似ている部分もあるようですが)。

睡眠

次に、腸の活動、つまり腸内の清掃や整備には、十分な睡眠が必要となるそうです。

脳にも(記憶の整理や定着などで)睡眠が必要なように、腸にも睡眠が必要であるようです。

ゆえに、眠る前に食事をしない方が良いそうです。眠る3時間前には夕食を済ませておくのがベストであるようです。

自律性

また、腸にも、神経ネットワークが存在するそうです。

脳は、神経ネットワークの集合体で、それによって私達は複雑な思考が可能になっているそうです。

腸には、脳に次ぐ多さの神経細胞が集まっていて、「腸管神経叢(そう)」という網目状の神経ネットワークを組んでいるそうです。

これにより、自律的に消化・吸収・排出に関わる「ぜん動運動」を起こしたり、消化液などの分泌物の調整をしたりすることができるそうです。

脳腸相関

その本によると、「脳と腸は互いに影響し合っている(=脳腸相関)」ことが科学的に実証されつつあるそうです。

「脳の状態」が「腸の状態」に影響を与えるだけでなく(緊張や不安による腹痛など)、

「腸の状態」が「脳の状態」に影響を与えることもあるそうです。

なお、腸は「第二の脳」とも言われているそうです。

実際に「腸の状態」と「精神状態や思考の傾向」の関連性は、徐々に解明されつつあるそうです。

例えば、腸に良い事をすることで、結果的に精神面・メンタル面を整えることができる可能性があるそうです。

また、腸は生命の根幹で、脳がない生物はいますが(ヒドラなど)、腸がない生物はいないそうです。

生き物が存在するために必要なのは、脳より腸であるそうです。

ゆえに、進化的には、腸こそ「第一の存在」であると言うことになるそうです。

つまり、腸という機能が先に存在していて、次に脳という機能が出来て行ったという進化の順番になります。

また、腸は生存に直接関わる臓器なので、自律的にいい状態を保つようにできているそうです:

  • 有益な物が来たら吸収し、
  • 有害な物が来たら侵入を防ぐ、
  • そして不要な物はまとめて体外に排出する.

腸内環境が乱れないように、腸内細菌が喜ぶエサ(ヨーグルトや納豆など)を供給し続けていれば、脳も良い状態を保ってくれるかもしれないそうです。

実際に、「脳の機能や精神状態」と「腸内の環境」には何かしらの関係性があると予想されているそうです。

例えば、うつ病の人は、健常者に比べ、腸内のビフィズス菌や乳酸菌が少ない、という研究結果を得ているそうです。

また、マウスの実験では、腸内細菌がメンタルの安定性に影響を与えることが示されているそうです。

実際に、腸内細菌を持たないマウスは、成長すると攻撃的になり、危険を伴う行動を示すそうです。

つまり、腸内細菌は、生物の行動パターンを変えしまう程の力をもつと言うことのようです(ただヒトの場合はまだ研究中のようです)。

また、腸内の神経ネットワークの情報は、腸内で留まるものではないそうです。

腸内の情報は、自律神経系や、ホルモンや細胞から分泌される物質などによって脳にも伝わるそうです。

これが、脳と腸が互いに影響し合う「脳腸相関」の基盤(根拠)になるそうです。

例えば、腸内細菌叢(=腸内細菌の集団)が乱れたり、腸の免疫機能が低下するなどのトラブルが生じたりして、その異常が脳に伝わると、不安感などの精神的な症状として現れるそうです。

ストレスを緩和する作用で知られる神経伝達物質のGABAは、脳内だけではなく、実は腸内でも作られるそうです。

さらに、心身を落ち着かせる作用があるセロトニンというホルモンも、その大部分は、脳内ではなく、実は腸内で作られるそうです。

腸内でも分泌されるセロトニンによって概日リズム(体内時計)が整うと、自律神経も整うそうです。

そして、自律神経が整うと、腸の働きも良くなるそうです。

なぜなら、腸の「ぜん動運動」をコントロールしているのは自律神経であるからだそうです。

また、概日リズム(体内時計)が整うと、心身のバランスも取りやすくなるそうです。

バランス

その本によると、理想的な腸内環境は、できるだけ多くの種類の腸内細菌がバランスよく存在する状態であるそうです。

多様な腸内細菌は、多様な健康効果をもたらしてくれるそうです。

栄養バランスが偏れば、腸内細菌はエサ不足に陥って、腸内細菌叢が乱れるそうです。

特定の何かを食べるのではなく、栄養のバランスを見て、「自分が取り過ぎている物を減らして、足りない物を補う」のが良いでそうです。

そうした「バランスを整える」ことが一番、体型(体質)の改善に効果があったそうです。

こうした栄養バランスのとり方は、多様な腸内細菌の活性化にも繋(つな)がるそうです。

ただ、腸内には多様な菌がいますが、私達がエサ(ヨーグルトや納豆など)を与えないと活性化しないそうです。

また、腸内細菌は単独作業ではなく分業制であるそうです。

つまり、一つの菌や一つの菌のエサだけ摂取しても効果が得られないそうです

菌によって役割が違うので、多様な種類の菌が活性化するように、食物繊維だけではなく、食事全体での栄養バランスを整えることが大切であるそうです。

小腸・大腸ともに、有害菌が増えて有用菌が減ると、それまで有用菌が生み出してくれていた恩恵を受けられなくなるそうです。

その本によると、食べ物を変える事こそが最も簡単で効果のある腸から脳(メンタル)への働きかけであるそうですが、その際のポイントは、良い栄養バランスを継続することであるそうです。

また、何事も過ぎたるは及ばざるがごとしで、偏った食事をせずに、色々な物をバランスよく食べるようにすると良いそうです。

なお、腸の影響が目に見える形で現れ易いのが、「肌」の状態であるそうです。

おまけ

運命学の基本は、「衣食住」にあると言われますが、確かに「衣食住」が整っている方は、極端なマイナス方向へ進んでしまうことはないのかもしれません。

ただ、極端なプラス方向に進むこともないのかしれませんが。

整った「衣食住」の重要性が増してくるのは、中年期以降なのかもしれません。

ちなみに、私のアメリカでのボスは、事あるごとに「自炊」することに強く勧めて来ました。

アメリカでは、「食」が乱れ易いのかもしれません。確かに、アメリカに研究留学して太ったと言っていた方もいらっしゃいました。

ちなみに、私は激務で痩せました。「自炊」しろと言う割には、その時間を与えてくれないようなボスでした(研究留学の記事へ)。